2021.01.30お知らせ
新型コロナウイルスワクチンについて
昨今、世界中で問題となっている新型コロナウイルス感染症のワクチンについて、現状を整理してみました。
当院では現在の診療状況を考慮し、残念ですが当院での接種実施に対応することは困難なためできませんが、皆様の判断の一助になればと思います。
本日(令和3年1月30日)の時点で、日本では38万人以上の方が新型コロナウイルスに感染しています。日本の人口は約1億2500万人ですので、我が国においては0.3%の方がすでに感染していることになります。感染していても診断が確認できていないケースも少なからずあると思われますが、診断が確定している方の数十倍いたとしても大多数の日本人は新型コロナウイルスに対して免疫がないはずです。
現在行われている緊急事態宣言や外出の自粛などの感染対策・生活の抑制は、当初からワクチンができるまでの時間稼ぎを意図して行われているものですので、ワクチンができた今、できるだけ早く接種することが求められています。
メディアからの情報でご存知の方もおられると思いますが、新型コロナウイルスワクチンは新しい機序のもので、例外的に早急に製造されています。
メリット、デメリット、まだわからないことを以下に示します。
メリット:
・新型コロナウイルス感染症の発症を約9割抑えることができる。
・新型コロナウイルス感染症による重症化を約9割抑えることができる。
デメリット:
・アナフィラキシーなどの副反応がある。
まだわからないこと:
・他者への感染が防げるかどうかわかっていない
・長期間(例えば半年後、1年後、5年後など)の予防効果はわかっていない。
メディアでも取り上げられていますが、アナフィラキシーという強めのアレルギー反応がどのくらい起きるかが気になっている方が多くおられると思います。
論文では、日本で接種予定で最も多いファイザー社のワクチンによるアナフィラキシーは100万人あたり11.1件と報告されています。インフルエンザワクチンは100万人あたり1.4件なので、インフルエンザより確かに頻度は多いことになります。ただ、今回のワクチンは新たにできたワクチンであるため、接種担当者が他のワクチンよりも注意深く副反応を観察した結果、報告数が増えた可能性が指摘されています。ちなみに、ペニシリン(抗菌薬)は100万人あたり4590件、NSAIDs(ロキソニンなど)は100万人あたり1300件と、日常的な薬剤の方が遥かにアナフィラキシーの頻度が高くなっています。
合理的に考えると新型コロナウイルスワクチンで過度にアナフィラキシーをおそれるのは控えるべきと思います。
長期的な副反応についても言及されていますが、それを確認するためには年単位の長い時間が必要になります。その間に生じるマイナス(ウイルスによる直接的な被害だけではなく、心理的な負担、経済的な問題など)を考えると、将来生じるかもしれない長期的な副反応よりも、安全確認のために必要な期間に生じるマイナスの方が大きくなるという見込みがされています。
予防接種は新型コロナウイルスに限らず、人間の集団に対して接種を行った場合に生じる悲劇よりも、接種しなかった場合に生じる悲劇が多いときに推奨されます。予防接種を受けて不幸にも副反応が生じることは確かにゼロではありませんが、予防接種を行わないことで生じる不幸にも注目すべきです。
こういった情報や考え方から新型コロナウイルスワクチンは急速に製造・承認され、国単位で接種を推奨しているのです。
ワクチンの効果がどのくらいの期間続くのか、症状がない感染者をどのくらい減らせるのか、感染拡大をどのくらい抑制できるのか、分からない点はありますが、社会全体の状況が現状より改善する見込みは高いため、集団免疫獲得のため、接種をお勧めします。